悩み(ゆうへ)

   悩み

七宝「いつも。」
かごめ「七宝ちゃんはまだ子供なんだから。」
七「いつも。」
珊瑚「七宝が可哀想だろ。」
七「いつもオラは思う・・・。」
・・・・・・
此処に1人悩む子狐妖怪がいた。
七「何でオラは子供なんじゃ――――――――――――!!!!!」
ザザーッ
犬「何叫んでんだ。うっせぇなぁ。気が散るじゃねぇか。静かにしろ!」
犬夜叉一行は今森の中で道に迷っていた。
そして犬夜叉が人のにおいを嗅いでいるところなのだ。
其処に七宝の叫び声が聞こえて気が散るのは当然のことだろう。
七「良いではないか。それぐらいで気が散っとると奈落に勝てんぞ。」
七宝も負けずと言い返す。
犬「んだとぉ~!?黙れっつってんじゃねぇか!!」
ボコボコッ
七「うわ~ん。」
あ~あ。またやってしまった。
か「犬夜叉、おすわりっ。」
ドシンッ
犬「ふんぎゃっ。」
いつもの通り犬夜叉が地面にのめり込む。
か「もう駄目じゃない。七宝ちゃんは・・・」
七「かごめ!」
か「へ?」
七「(このままではオラはずっと子供だと思われる。其れは間違っとる。早くオラが大人にならんと皆の気が引き締まらん。)」
か「なーに?七宝ちゃん。」
七「かごめ!オラは大人じゃ!」
か「へ??」
かごめはわけのわからないと言った顔で七宝を見つめる。
七「かごめ!よく聞くんじゃ!オラは大人じゃ!しっかりとした大人じゃ!かごめに庇ってもらわんでもちゃんと1人でやっていけるぞ!オラは大人なんじゃから!!」
か「は、はぁ・・・。」
かごめは、まだわけのわからないと言った顔で頷く。
かごめが不思議がるのも当然のことだろう。
1匹の小さな子狐、何処から如何見ても小さな子狐が自分は大人だと言い張っているのだから。
弥勒「七宝。其れは如何いう冗談ですかな?」
弥勒が如何にも可笑しそうな顔で歩み寄る。
当然のこと、七宝の言ったことは皆本気などにはしていないのだ。
七「みんな・・・みんな・・・嫌いじゃぁっっ!!!!!」
七宝はそう言い残し、森へと走り去って行った。
皆はぽかんとした顔で突っ立って、七宝が走り去って行くのを見届けていた。
弥「反抗期・・・というものでしょうか?」
弥勒がぽつんと呟く。
珊「さぁ・・・?」
珊瑚が弥勒に答える。
か「とにかく追わなきゃっ。」
かごめが我に返って、七宝を追おうとする。
犬「待ちな、かごめ。」
犬夜叉がかごめの手を掴み、言う。
か「なんで?犬夜叉!離してよ!七宝ちゃん追わなきゃっ。迷子にっ・・・。」
犬「あいつはほっときな。」
か「へ?犬夜叉?何馬鹿なこと言ってんの・・・?七宝ちゃんが可哀想じゃないの。」
犬「それが余計な世話だっつってんだ!」
か「っ・・・犬夜叉の馬鹿!七宝ちゃん今1人なのよ?妖怪にでも出くわしたら・・・。」
かごめの頬を涙が伝う。
犬「あいつは大丈夫だ。決して負けねぇ。」
か「でもっ・・・!戦ったことないのよ・・・。」
かごめは泣き崩れる。
か「私がいけないんだわ。私があんなこと言ったから、私が・・・。」
弥「かごめ様、心配は無用ですよ。」
か「だって、だっ・・・。」
犬「けっ。それが七宝は嫌なんだよ。」
か「え・・・?」
弥「七宝は、子供扱いされるのが嫌なのではありませんか?七宝は大人になりたいのでしょう。」
か「私はただ心配してるだけよ?」
犬「だーかーら!それが嫌だってんだ。」
か「っ・・・。」
犬「あいつはまだ子供だが、俺達についてきてんだろ?やっぱり役に立ちてぇんだよ。だが、かごめが言ってる心配はな、ただの子供扱いなんだよ。その子供扱いのせいで、やりてぇと思ってることが全然できやしねぇ。・・・ま、七宝のことはほっとけ!何時か戻ってくっからよ。」
犬夜叉が決めゼリフを言っている間、影で隠れて話す者が居た。
珊「へぇ・・・。あいつ、あんな人の気持ちわかるような奴だっけ?」
弥「違うと思っていましたな・・・。」
珊「だよね。」
ピクッ
犬「ん~?何か言ったか?てめぇら。」
弥「いえ、気のせいでしょう。」
犬夜叉が怪しそうな顔で覗きこむが、弥勒は平然として答える。
か「そっ・・・か・・・。これが七宝ちゃんの家出の原因だったんだ・・・。ごめん・・・ね。ごめん・・・っ。」
またもかごめは泣き崩れる。
弥「かごめ様も辛かったのですね・・・。」
弥勒が泣き崩れているかごめに近寄り、腰を下ろす。
珊「ん~?」
珊瑚は、弥勒がかごめの尻の手を伸ばしているところを発見する。
珊「法師様っっ!!!」
ドガッ
辺りに飛来骨が頭に直撃した音が響き渡る。
弥「いや、珊瑚。これはとんだ誤解ですな。」
珊「ったく。この助平法師っ!」
か「はぁ。(心:なんか泣けなくなってきた・・・。)」
犬「とにかく!今日はもう夜おせぇし、此処で寝るぞ!」
弥「はい。」
こうして七宝を除いた犬夜叉一行は、野宿をしているというわけなのだ。
はたして、七宝は何処に――?
七「ひっく・・・。此処は何処じゃ・・・?」
七宝は泣き止み、辺りを見回す。
七「犬夜叉ぁ。かごめぇ。弥勒ぅ。珊瑚ぉ。雲母ぁ。」
嫌いになったはずの仲間の名を呼んでみる。
七「ふっ。まぁ良かろう。みんなもうオラのこと嫌いじゃろうしの・・・。」
ザワザワ
妖怪「嫌いなんかじゃぁないぞぉ・・・。」
その時、風の音と共に、不気味な声が聞こえてきた。
ハッ
七「誰じゃ!?」
七宝ははっとして、辺りを見回す。
妖「わしはお前が好きじゃぞ・・・。くくっ。美味そうなにおいがするなぁ・・・。」
七「妖怪か!オラと闘う気か!?」
妖「くくく。闘うだと?貴様ごとき小妖怪など闘う価値もないわ。ひと噛みにしてくれる!」
そう言い、妖怪が襲ってきた。
七「くっ。」
なんとか避けたが、このまま戦っていると、すぐ喰われてしまうだろう。
七「(心:犬夜叉を呼べば・・・はっ。いかん。それはいかん。オラは・・・オラはこの妖怪に勝って、強くなるんじゃぁっ!)」
七宝はそう心に誓い、妖怪と戦う決意をした。
妖「ちょこまかと逃げ足が速い!」
七「そうかの!狐妖術つぶし独楽!!」
妖「!?ぐわっ。いででででで。」
――犬夜叉達は――
か「スースー・・・」
ピクッ
犬「!・・・」
ガバッ
弥「・・・妖気です。」
珊「丑寅の方角だね。」
か「ん・・・。あれ?みんなどうしたの?」
犬「妖怪だ。行くぞ!」
ザッ
――七宝と妖怪は――
妖「いででででで・・・ん?これは・・・。」
七「ちっ。(心:バレたか!)」
妖「こんのぉ、狐ぇーーーーっっ!!」
七「おぉーっと。分身!」
ポンッポンッポンッ
妖「ん?子狐がいっぱい?此れかぁっ!此れかぁっ!」
パンッパンッパンッ
妖「ん?どれも偽・・・。隠れても無駄だ・・・。」
ザッ
妖「何処だぁ~?」
七「(心:此処に隠れてば見つからん。)」
七宝は草に潜り込んでいる。
妖「馬鹿めっ!」
ザッ
妖怪は草をなぎ払った。
七「はっ。」
妖「くくく・・・。み~つけた~。においがあるんだぞ~。」
七「ちくしょう。狐火っ!」
妖「うわっ。あぢぢぢぢ。」
七「これでどうだ!」
ガブッ
妖「だーーーーーーー、いででででで。」
七宝は妖怪の顔に狐火を繰り出し、首に噛み付いた。
ザザッ
七「誰じゃ!?」
妖怪の首に噛み付いたまま七宝が尋ねる。
犬「七宝・・・。」
七「その声は・・・犬夜叉か!?」
か「七宝ちゃん!・・・きゃ。妖怪が。」
珊「顔が燃えている?狐火か。」
犬「おい、七宝。俺らはほっといていいんだな!?」
七「手を出すな!」
か「(心:七宝ちゃん・・・。)」
弥「妖気の元はこの妖怪でしたか。なら大丈夫ですね?犬夜叉。」
犬「ああ。他に妖怪のにおいはねぇからな。」
ドサッ
犬「此処で座って、七宝の戦いぶりでも見るか。」
か「・・・うん。」
犬「七宝!自分のできることだけやりな!」
七「ぐぐぐ・・・わかっとるわい!」
噛み付きながらもしゃんと答える七宝。
七「妖怪ぃぃぃ!!」
ブチッ
妖「グわーーーーーーーっっ!!!!!・・・この・・・くそ狐めが・・・っ・・・。」
七宝は妖怪の首(脈)を噛み切り、妖怪を倒した。
ドッシンッ
七「はぁっ・・・はぁっ・・・。」
七宝の歯から妖怪の血が垂れ落ちる。
弥「よくやりましたな、七宝。」
珊「すごいじゃないか。」
七「そんなに褒めちぎらんでも良いわいっ!」
珊「っ・・・。」
・・・・・・
七「・・・何故来たんじゃ。」
か「え・・・?」
七「何故来たんじゃぁっ!オラのことなんかほっとけば良かろう!!」
か「っ・・・!(心:違うの・・・違うの、七宝ちゃん。だけど、また何か言ったらきっと傷つく・・・。どうしよう・・・。)」
犬「あんな、誤解のないように言っとくけど、俺達が来たのは妖怪の臭いの元を確かめに来ただけだ!別にてめぇのことを心配して来たわけじゃねぇっ。」
珊「犬夜叉!?」
七「・・・!?・・・。」
犬「だがな、1つだけ言っとくことがある。」
七「何じゃ・・・!」
か「(心:犬夜叉・・・?)」
犬「おめーは俺達の仲間じゃねぇのか?」
七「っ!?・・・・・・仲間に・・・仲間に決まっておろうがっっ!!」
犬「だったら聞くが、仲間を心配するってのはいけねぇことなのか!?」
七「・・・・・・。」
犬「普通はな、心配して貰えるってことだけでありがたいと思うだろーがよ。心配してもらえねー奴もいるんだぜ?」
七「それぐらいっ・・・それぐらいわかっておる・・・。」
珊「ずっと前・・・法師様が居なくなった時あったろ・・・?その時、私達すっごく心配したじゃないか・・・。その時と同じなんだよ・・・。みんな・・・仲間なんだから。」
ドキ・・・
七「・・・・・・。(心:なか・・・ま・・・?)」
犬「それとも何だ?おめーは弥勒が居なくなった時、全然心配してなかったってのか?」
七「な・・・そんなわけなかろう!!オラは本気で心配したんじゃ!!」
犬「ふっ。だったらかごめがおめーのこと思う気持ちを同じなんじゃねぇのか?」
七「ぁ・・・。」
犬「わかったら行くぞ!」
ザッ
か「七宝ちゃんっっ!!」
ダッ
かごめは駆け寄り、七宝をおもいきり抱きしめた。
ぎゅぅ~
七「かご・・め・・・。かごめぇっ。」
七宝の眼から涙が1粒ほろりと落ちる。
七「オラ・・・オラ・・・幸せなんじゃな・・・。こんなにも思ってもらえて・・・。」
か「七宝ちゃん・・・。私も幸せよ。」
弥「無事解決。ですな。」
犬「おい、おめーらおせーぞ!」
か「ん、行こ。七宝ちゃん。」
七「おう。」
七宝はぴょんとかごめの肩に乗る。
か「待って、犬夜叉~~。」
手を振りながら犬夜叉の元に駆け寄る。
七「犬夜叉。」
七宝がかごめの肩から犬夜叉の肩に飛び移る。
犬「あー?」
七「さっきの言葉・・・良かったぞ。」
犬「けっ。」
か「ねぇ、何こそこそ話してんの?」
弥「全く。仲がいいんですから。」
犬「けっ。うるせー。」
珊「犬夜叉、その態度は良くないだろ。」
犬「うるせーっつってんだろーがよ。」
七「(心:今思ったが・・・犬夜叉の方がまだまだ子供じゃな。)」
七宝は1人にやける。
か「もう、犬夜叉ったら。」
ギクッ
犬「な、何だよ・・・。」
か「・・・・・・今日はやーめた。」
犬「?・・・」
か「だって・・・。」
かごめは思いきり空気を吸い込んだ。
 「喧嘩はもうこりごりだもんっ。」
かごめの声が空に響いた。

―――今日も良い天気じゃ―――


                ~END~


★☆★☆コメント★☆★☆

七宝の悩み(?)だよん♪
いっつも子供、子供ってねぇ。
でも、それは仲間だから。なんだよね(^_-)-☆
最後の方が意味わかんないけど;


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